PASSENGERS
タイトル
PASSENGERS
発売日
2023年6月16日
レーベル
Turntable Records
コメント
ドメイン

私達の現在地は何処にあるのか
地軸は揺れ、磁場は動き続ける
そして私達は変わり続ける

私達の現在地は何処にあるのか
人心は揺れ、関心は欲望の虜だ
地球は美しいが人間は醜い
そんな囁きが聴こえる世界にいる

だから夜明けの瑠璃色は格別だ
水平線により一日の基準が引かれる
私達の古い記憶を解き放つ瞬間
他方で夕暮れは郷愁の装置でもある
悔恨、未練、喪ったものへの思慕
理屈で語れないものに人は惹かれる
それが決して役に立たないのであれ
現実と幻の境を行き来するのだ

私達の現在地は何処にあるのか
今は見ず知らずの人と知り合い
行ったこともない場所を知り得る
指先のタップ一つで感情も生まれる
けれどもそこに風や息遣いはなく
泥濘みや避けがたい匂いもない
それを良くも悪くも世界の一部とし
私達の身体の延長線で痛みに変え
モバイルスーツを纏う現実にいる

死は身近に溢れていてしかし遠く
生は身近にあって感じ得ないものだ

出会いは一瞬だが、喪失は永遠
だから私達は何度も朝、生まれ変わり
夕暮れを彷徨い、夜、思い返す

自然はゆっくりと位相を変えてゆく
やがて私達は見失い、忘却の果てに閉じ
地中深くに埋葬されてしまう

私達の現在地は何処にあるのか
若く、勢いのまま歩みはじめても
人は等しく老い、弱さを露呈する
墓碑銘は風化し、やがて苔がむす
幾ら何体もの分身をつくるにせよ
人は無に帰り、存在は永遠ではない
見ず知らずの人がそこに住処を建て
やがて街として文明に帰すのだ

だから私達は今を生きる

まだ霜のにじむ地で春の匂いを嗅ぎ
踏み出した少年
梅雨のベランダで誰かとの夏を想い
今七月を迎えようとしている

クリスティーナ、クリスティーナ
家に辿り着けたかい?

草原を懸命に這って家路を辿るあなたを
僕は決して忘れない