Feb9
プロ・ミュージシャンを本気で目指す学生たちへの10のメッセージ
2014年2月09日 JUN UEMURA
名前は明かせませんが、東京にある、或る音楽専門学校講師でもあり、多くの活動をされたプレイヤーミュージシャンが、プロ・ミュージシャンを目指すもの達へ、渾身を込めた警鐘と叱咤激励であります。私もこの歳で身に沁みる想いです。と、同時に安堵もしました。これからの若い音楽家たちへ。その昔、村上“ポンタ”秀一さんから、音楽は文科系ではなく、体育会系だと言われたことを思い出しました。吹奏楽出身の私には当たり前の事でした。

■プロ・ミュージシャンを本気で目指す学生たちへの10のメッセージ

一、君たちに「どうしてもプロ・ミュージシャンになって欲しい」と頼んだ人は誰もいません。君たちが自分から言い出したことです。

二、君たちがプロ・ミュージシャンを目指していることに諸手を挙げて賛成している親、親戚、母校の先生等はいません。例え「自分の信じていることをやりなさい」と応援してくれる親でも、君たちが一流大学に進学したり、安定した職業に就いたほうが安心する、というのが本音です。君たちの決断が周りに与える心配・心労を自覚しながら励みましょう。

三、「プロ・ミュージシャン」とは「CDをリリースしたこと」でもなく(アマチュアでもCDは出せます)、「雑誌やTVに出る」でもなく(TVに出てもバイトで食いつないでいる人は山ほどいます)、「PVがYouTubeで流れる」でもありません(ハンディカムとパソコンがあれば誰でも作れます)。「プロ」とはこの先20年~30年間、自分の生活を音楽のスキルで賄える人のことです。

四、「プロ・ミュージシャン」と称するからには、音楽のお仕事で家賃、光熱費、食費、楽器代、機材車、そして場合によっては自分の家族の生活費も稼いで下さい。それが出来なければ「プロ」という言葉はただのカッコ付けと思われても仕方がありません。

五、音楽で生活したいなら、必ず「一流」を目指しましょう。初めから二軍を目指して入団する野球選手はいません。全員「いつかはメジャーリーグ」ぐらいの気持ちで挑んでいるはず。「一流ではないけれど成功だけは欲しい」は調子が良すぎる話ではないでしょうか。

六、楽器の練習が辛いので、逃げ道として「作曲・編曲家になる」のは止めましょう。楽器の習得もままならない人が作曲・編曲家としての厳しい道に耐えられるとは思えません。スキルがなくても「あわよくば一発ヒットを当てれば」と考えているなら、たぶんロト6のほうが当たる確率は高いでしょう。

七、プロになれなくても音楽講師「ぐらいは」なれるだろうという考えは捨てることをお勧めします。音楽教育の場でも、それで食べていける人は少数派です。「音楽講師」と称しながら、実は「バイト組」のほうが圧倒的に多いのが厳しい現実です。ミュージシャンとして食べていくスキルもないのに講師としては成功出来るという確信の根拠が全く見当たりませんし、そもそも学びに来る生徒さん達に失礼です。

八、どんな職業でも、スキルが足りないほど成功のチャンスも小さくなります。「譜面が読めなくてもいい」「理論なんか知らなくても大丈夫」「様々なジャンルに対応出来なくても何とかなる」と考えているのなら、これらのスキル不足により音楽業界で逃すチャンスを補って余りある、他人の何十倍もの特別な能力を持っていることをお勧めします。

九、君たちのアルバムやライブは、同じ料金である限り、日本も含めた世界中のアーティストのアルバムやステージとの比較対象となります。君たちの作品やパフォーマンスが他の一流アーティストのそれより劣っていても、敢えて君たちにお金を払うのは親族や友人だけでしょう。それで食べていくのは少々無理があると思います。世界の誰とでも張り合える自信を持てるぐらいのスキルを身に付けて下さい。

十、音楽学校は狭い世界です。自分が通っているスクールで「ダントツ一番」であっても、音楽を仕事とする現場ではなかなか認められない場合も多々あることは、君たちの先輩の多数が痛いほど経験しています。せめて(!)自分が通っているスクール内ではトップに立つぐらいの気持ちで頑張って下さい。
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