逡巡
太陽も沈みかけて みんな帰っていくのに
夕焼けで 小焼で カラスも帰っていくのに

乾いていく 背中の汗を感じ
「俺はどこへ帰りゃいいの」とつぶやく
ポケットの中 強くにぎった右手
深く息を吐いた

何が良くて 悪くて
何が素晴らしいかなんて
私に分かるのですか あなたには分かるのですか

校庭のど真ん中に
ちっぽけな絵を描いた
ちっちゃな頃 いつも見てた
記憶だけを頼りに

いつの間にか 使い古したヤスリが
どこから見ても 程々な流線型に
対象なのか 非対称なのか
全て不明な 大傑作は何処へ

明日は 天気になるかな
考えるうちに明日になり
どんな大人になるかな
逡巡のままに大人になり

きれいな月の 黒い影が
今日は何を 私に命ずるの
逆らい続ける日常を 見透かしたように
無理難題を 繰り返し 繰り返し

もう少し あともう少し
私の歩みに合わせて
遠ざかる 真夏の蜃気楼のような
終着点へ あと もう少し