Jul11
三矢サイダー
2008年7月11日 成田どんぐり
愛だ恋だとうるせぇんだアホ共が。
男は黙ってサッポロビール!

これは僕の中学の時の体育受持ちの平井先生、いや平井軍曹の受け売りだ。

軍曹は凄い人だった。まるで戦時中からそのまま抜け出てきたような容姿。齢60近くにして男性ホルモン剥き出しで、早朝5時くらいから朝刊を読みながらグランドを何十週も歩くのが日課。ちなみに息子の名は太郎。

就業中もその豪快さはまるで変わらず、授業が始まってもわいわいと落ち着きのない僕らに「黙れ、うじ虫共!」と渇を入れるのは日常茶飯事。バレー用のボールを足で蹴るなと再三に渡り注意を受けながらもやめようとしない僕らについにブチ切れ、「蹴るなって何回言ったら分かるがなー!」って叫びながらバレーボールをおもいっきり蹴り倒した時なんか僕ら一同声すら出せなかった。

軍曹は僕が所属していたバスケットボール部の顧問、監督でもあった。が、部活ともなると高度で専門的な知識を要するため、体育の授業で基本ルールを教える程度の知識では通用しない。(顧問に就任して2、3年ってのもある。)
しかしそれで臆する軍曹ではない。僕らがボールを持つと「攻めろ!」、相手にボールを奪われると「守れ!」と実に的確かつシンプルな指示で30分間フルに僕らの精神的大黒柱になってくれた。

そして卒業式の日、僕は軍曹に腕相撲を挑みに行った。まるで歯が立たなかった一年生の頃とは違い、腕っぷしに自信がついたきね。実際、腕相撲は校内でも五本の指に入っちょったと思う。
僕は意気揚々と職員室に入り軍曹の机の前に立ち言い放った。
「平井先生、いや今日からは平井さん。最後に腕相撲の勝負して下さい。」
軍曹は言う。
「ムム…生意気な。よし、やるか。」

結果はあっけないもんやった。僕の手の甲は二秒ともたず机に叩きつけられてしまう。そして軍曹は言う。
「成田、何年かしたら飲みいくか。男は黙ってサッポロビール。」

あれから15年。僕は未だにビールは飲めないけれど、軍曹の偉大さが分かるようになってきた。今年の正月にでも軍曹との約束を果たしにいこうかなぁなんて、部活帰りにみんなでよく飲んだ三矢サイダーを飲みながらそう思った。
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