筆跡の始まり
「世界の始まりの記念のこれどうぞ」
分厚い本とペン渡された
無邪気な子供や白髪混じりの政治家も

これまでの出来事や考えてきたこと
書き綴るようにと渡された
「意味は君の手で答えは君が描いた中に」

「世界はこんなに白くて染まっていないんだ」
それを自由と呼ぶのにはあまりに弱くて
どれだけ望んだら良い?
ペンを空に走らせる
ページに閉じ込められる
それでも僕は書き続ける

何が欲しい
何はいらない
そんなのどこにも書いていないのに
それが欲しい
それはいらない
右手がいつも動いてしまうんだ
書き終えた後に何も残らないのは
誰のせい?誰のせい?

「世界が終わった頃また受け取りに来るよ」
聞いた僕は少しずつ嘘を
インクに混ぜていた
誰の目にも触れないのに

自分を大きくそして強く書き換えた
ふと手を止めて読み返したら
こんなにも僕は僕を嫌いだと思えた

「世界の続きを知りたいと思わないのかい?」
それが確かに在るものか疑っているんだ
そこに何を書けば良い?
ペンの先を押しつぶす
ページに飲み込まれている
そうやって書き手から奪っているんだ

誰が誤り
誰が正しい
そんなのどこにも書いていないのに
それが誤り
それが正しい
右手がいつも動いてしまうんだ
書き終えた後に何も残らないのは
僕のせい?僕のせい

もう嫌だよ
書けないよ
書きたくもないよ
終めても構わないんだろう?

「それでもどうせ書き続けるんだろう?」

何が欲しい
何が正しい
そんなのどこにも書いていないから
折れたペンで
明日を描いて
ページは今も重なっていくんだ
書き終えた後に何を考えるのかは
知らないし
知らなくて良い