下北沢のスター
ギターケースを背負って
開かずの踏切を待つシルエット

宙を漂う焦点
「何を見てるの?」って訊けば
「別に何も‥」って返す

言葉遊びが大好きだから
かき集めてはどんどん溜まって
頭の裏で像を結んで
眠らない夜をまた生み出す

私の彼はソングライター
下北沢で歌ってる
なんでもないこと叫んで
ステージの上で星になった

興味の外か内か
それだけが全て判断基準
三大欲求も範疇
食べない生活は続く

ふと身軽になりたくなって
集めたものを平気で捨てる
形のないものは端から
疑りかかって何か壊す

何時の間にか
私も興味の外側にいた
今ではほとんど朧げで
指板の上を滑る細い指だけを
憶えている

遠いあの人はソングライター
下北沢で歌ってる
私の知らない世界を
誰かに必死に伝えて

まだ下北沢で歌ってる?
疑問に答えは出ないまま
何でもないこと叫んで
ステージの上で星になった

どうか長生きしてね