Jun19
目覚め。
2007年6月19日
今日の朝のことである。夢うつつの中、お隣さんから「ドン!ドン!」と何かを撃ちつけるようなけたたましい音と共に目が覚めた。私が目覚めてもなお続く音を聞き、何がおきているのかすぐにピンときた。

お隣さんは修行中の身であり、自身の頭を床に何度も撃ちつけているに違いないと。自身の煩悩を床に撃ちつけ、戒めの中で彼の一日が始まるのだ。これは決して誰しもができることではない。

以前、彼とすれ違ったときに彼の頭髪はまさに風前の灯火といったところであった。恐らくは厳しい修行で頭髪が抜け落ちたのだろう。しかし、頭髪がどうなろうと彼にはどうでもいいのかもしれない。むしろ、剥き出しになった頭部と皮脂によって艶やかな光を放ち、より彼の輝きを増してさえいるのだろうと感じた。

果たして私に彼と同じことができるであろうか。悲しいことに私は酷く世俗的な人間である。煩悩に流され、それを戒めることも無く、頭髪に至ってはほんの数本抜け落ちるだけで気が気ではない。事実、私は彼と始めてあったときに、彼の頭髪を見て「かいわれ大根のようだ」と思い、今日まで彼のことを心のなかで「かいわれおじさん」と呼んでいた。しかし、現実は私こそがかいわれ大根のような人間だったのだ。私は自分の小ささを知り、嘆いた。

そんな私の矮小な悩みを打ち消してくれるように彼の戒めの音は鳴り響く。

「ドン!ドン!」「ドン!ドン!」

これまでひた隠しにしてきた私の醜い感情を撃ちつけられるようだった。

しばらくして音が止み、私の部屋に静寂が訪れた。

私は喉の渇きを満たすために自宅近くの自販機まで足を伸ばした。その帰りに彼に出くわしてしまった。私はなるべく彼の目を見ないようにやり過ごそうとした。しかし、彼は私に気づきこう言った。

「ごめんね!今日家の模様替えしてて、うるさかったでしょう。」

彼が嘘をついていることはわかっていた。しかし、私は彼を尊重し、「いえ全然気になりませんでしたよ。」と言い、笑ってみせた。彼にも笑顔が混じる。

さっきかったばかりの清涼飲料水を口に含んだ。冷えたコーラが私の喉を潤した。
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