Jul10
『微かな震動』Vo.2
2008年7月10日 コーコ
コーコ blog<A href="http://blog.livedoor.jp/cromagarage/" target="_blank">「哀しみが晴れる日」より</a>より

彼女を乗せたバスは私を残し走りだす。

まもなく私が乗るバスが来る。あの数秒間のもどかしさから解放され一息ついてバスに乗る。

彼女は気付いた。その直感を信じた私は、メールが来るかも知れないと期待してしまう自分を振り払うかの様に慌てて彼女にメールを入れた。来るかもわからないものを待つ事ほど怖いものはない。

送信完了。すぐに返信が来た。

『私も気付いたよ~、バンドは順調?』

まだまだバンドで成功してるとは言えないが、精一杯の見栄で繕ったメールを私は返した。


きっとここで既に私は間違えたんだと思う。再会というチャンスをあっけなく自分の弱さで失った。友達に見栄を張ればさらにお互いを隔てる壁は厚くなる。心の距離は縮まらない。

情けない自分を他人に見られたくない。ただの弱虫なのに精一杯強がってたあの頃の私が蘇る。
彼女に好かれたいと思う程素直になるのが怖かった。彼女を前にするとなぜか怖じけづいてしまう。

彼女からさらに返信が来た。マンガをよく描いてた彼女。デザイン系の学校を卒業して今は勤め先の会社で社内ポスターを描いてるとの事。やりたい事が出来て楽しいとメールには書いてあった。

私は知っている。ひたすら絵を描いていた事も、将来について深く考えていた事も。

だけど、あの頃の私に一体何が言えたというんだろう。はっきりした夢もなく、彼女の努力や将来など理解出来るはずもなかった。

よっぽどくだらない毎日を過ごしていたんだろう。あの頃何をしてたかなど覚えていないに等しい。

皮肉にも今の私はバンドという小さな社会で生きている。努力しなきゃ掴めない夢。努力だけじゃ掴めない夢。そのど真ん中で生きてる。今ならわかる気がする。何よりもあの頃絵を描く事が大切な事だったんだろうと。私と遊ぶ事よりも遥かにずっと…。


つづく
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