Aug9
短編小説~DO YOU WANNA DANCE?~5
2008年8月09日 カオスマンの今夜も脇道放談41
西岡は何故かこいつを物凄くいじりたい衝動に駆られた。

「パートは何だったんですか?」

「俺はベースだよ」

(微妙だな・・・)

しかし、今の彼の答えでその衝動は急速に萎んでいった。

何故なら音楽の心得の無い彼にとって「ベース」というものに対してなんのイマジネーションも沸かなかったからである。

(早くあいつ帰ってこねえかな・・・)

「俺はなーバンドで売れたかったんだけどな・・・」

西岡にとってほんとどうでも良い話である。

そして、自分がタンタン麺を作ると言い出した事に対して激しく後悔し始めたのだった。

(もう、家帰りてーな)

この後リーマンの一方的な話は続いた。

下らない武勇伝や、某有名バンドの名盤の話。
自分の音楽のルーツなどを彼は喋り続けた。

西岡はもうこいつをぶん殴って気絶させて店の外に放り出したい気分だった。

タンタン麺に対するテンションも残り数時間の今日と云う日を生きるテンションもどん底のさらに底まで下がった頃、上原が帰ってきた。

「遅くなりました~すんません。中華そばがなかなか見つからなくて・・・」

「おーじゃあ、早速作ってくれや」
一通り話し終え満足そうな顔して酩酊リーマンが言った。


「おせーよバカ!!俺ずっとあいつのくだらねー話に付き合わされていたんだぞ・・」

「そんな事より早く作りましょう。」
上原は冷静に無視した。

「なになに、ごま油を熱し、にんにく、ショウガを入れて炒める。ひき肉、ザーサイ、長ネギを加えて炒め合わせ、しょうゆ、ジャーマージャン、がらスープの素、水、すりゴマを加えて煮立たせる。。か」

二人ともすっかり不味いものを作るという目的を忘れていた。

リーマンはビートルズのレコードジャケットやらがある壁をずっと眺めていた。

「えーと、これをこうして、、あちっ!!!お前片栗粉水で溶いとけ!!」

「うーんちょっと味が薄いな、ジャーマージャンをもう少し足すか・・・」

20分ほどでごく普通にタンタン麺は完成した。

「お客さん、お待たせしました。タンタン麺です」

満面の笑みで西岡は言った。


しかし、リーマンは「??」という顔をしていた。
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